ゆうきみ 02/06/09


「っつーことで、始まったわけだが。」

  「・・・何が?」

「・・テキスト版『処刑人と一緒』が。」

  「へ?何時始まったんだよ・・」

「だからついさっきだよ」

  「ふーん・・・で、何?」

「なんとつまらねえ反応だ。妙に冷めているのはなんのせいだ?」

  「別にどのせいでもねえよ。」

「本当かよ。」

  「まぁ強いて言うなら、ゲーム自体にちょっと飽きが来たというか・・」

「・・・かぁーーーっ!!何シケたこと言ってやがるんだ!」

  「だって仕方ないだろ?もう食傷気味なんだよ・・」

「このイカレポンチめ!!」

  「お前ほどイカレちゃいねえ。」

「なんだと〜!?」

  「いくらテキストベースだからって、そのうさ耳となべつかみと小脇に人形を
       抱えているようなヤツにイカレてるなど言われたくねえ。」

「くっ・・・!ああいえばこういいやがって!!
     お前のような倦怠期を迎えたヤツはこのゲームでもやっとけ!!!」


  「これはなんだ?」

「これがかの有名な鯖ゲー第1弾『夕陽の中で君は』だ!!」

  「有名・・・ってそんなに人気あるのか?」

「やればわかる!!!」

  「でもこれPCゲームで更に言うとエロゲーとか言うヤツじゃないか」

「なんだ、今更恥ずかしがるような年かよ!」

  「そうじゃねえよ、とりあえずPCがねえっての。」

「そういうと思って、俺がメーカーパソコンを持ってきてやった。喜べ。」

  「メーカーって、ソニーとかNECとかか?」

「いや、ヤマダパソコン

  「・・・ハァ?ヤマダってあの電気量販店の?」

「そうだ。」

  「・・どっからどう見てもそこらへんの兄ちゃんが作ってそうな位の
     ロークオリティーなアイテム
だぞ。本当にメーカーモノと言って良いのか?」

「まぁ何事も臨機応変にだ。それに一応動作するんだからいいだろ?」

  「まぁ借りる人間としては動くなら別に文句はないが。」

「じゃあさっさと始めろよ。」

  「そうせかすなって、今PC立ち上げるからよ。」


PCを立ち上げてまんまと「ゆうきみ」をインストールするパニッシャー。
ニックはその横であずまんが大王を黙々と読みふけっている。


  「・・・なぁニック」

「なんだ、どうした?」

  「なんか速攻でインストール完了したんだけど・・・」

「あぁ、それな・・容量が20MBもないんだ」

  「すげえな、残りHDD容量が少なくても問題なく入れられるな」

「あぁ。これはこれでユーザーフレンドリーなのかもしれんな」

  「んじゃ、早速やってみるか」

「おお、頑張ってな」

 

約20分後

 

  「・・・おい、ニック」

「どうした。終わったのか?」

  「これ・・本当にゲームなのか?

「おいおい冗談きついな、フランク。ゲームに決まっているだろ?裏にしっかりと
      『ギャグありシリアスあり傷心旅行アドベンチャーゲーム』
      ってキャッチが書いてあるじゃねえか。」

  「いや、これはゲームじゃないだろ・・・」

「酷いこと言うなぁ・・ちゃんと選択肢あったろ?」

  「・・・答えが一つしかない選択肢がな・・・」

「ハハハハ。まぁ愛嬌愛嬌。」

  「それと、勝手にかつ強引にエロ展開になって行く所が最悪。」

「確かに、展開の強引さ加減は昔のエロゲーにも匹敵するな

  「そして、最後のエンディングのところだが・・」

「おうよ。」

  「それぞれのキャラが居る場所を無視するか留まるかでキャラごとにエンディングが
       変わるって、そんな簡単なエンディング、本当にゲームと呼べる代物か?
       ついでに言うと、一巡だけでCGがコンプリートするってのも問題ある気がするぞ。」

「色々とツッコミ所満載だろ?」

  「っつーか、これが量販店で並んでいた所を想像するのが怖い」

「だが、ここに実物があるんだ。」

  「・・まさかとは思うが・・・」

「あぁ・・・そのまさかだ・・・。」

  「すまん、あまりの不憫さに涙が出てきた

「まぁ良い勉強にはなったぞ」

  「だろうなぁ・・・」

「だがな、ひとつ良いこともあったぞ。」

  「ん、なんだ?」

「他のクソゲーと呼ばれるソフトさえも楽しめるようになったことだ」

  「・・前向きな考えだ」

「いや、本当だって。とりあえず他の適当な作品やってみろよ。」

 

更に数十分後

 

  「・・なんてこった。楽しく感じるぞ・・・

「だろ?」

  「ゲーム倦怠期だったとは思えない位にゲームを堪能している自分がいる。」

「それが唯一良かった点だ。」

  「いわゆるショック療法というヤツだな。」

「まさにそれだ。」

  「だが、こんな同人ゲーム以下のレベルでもパッケージソフトとして
     成り立つ
なんて、世も末だなぁ・・・。」

「まぁそういうなって。」

  「・・あとさ、一つ言って良いか?」

「おぉ、なんだ。」

  「このエンディングに流れるショボい歌、なんとかならないのか?」

「すまん、どうにもならん。」


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